次に紹介されたのが、各侍の作品秘話。
私の写真展レポートで、サラリとだけ紹介したのはこのためである。<これホント!(笑) |
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今回の写真展テーマは、「地球大好き!」を根幹にした「記憶に残したいもの」。
初日に写真を見た時点で(写真が)熱く語ってきたので、今回用の撮影だけ済ませ、会場の雰囲気の紹介にとどめた。
案の定(笑)、各侍のどこか嬉し恥ずかしげな口調の中にも、
「これって、どうよっ?!どう思うよっ??」と問いかけたいものが見え隠れしていたように思う。
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まずは、吉田さん。
ライフワークに巨樹を撮影しているわけだが、
そのライフワークそのものが、
今回のテーマそのものとも言えるのだろう。
長い年月に起こった様々な出来事をその肌に刻む巨樹。
また、文化というもののなごりが形取られた遺跡。
ともに、遠い記憶を残したもの。
これからも、大切に残していきたいものと言えるのではないだろうか。
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吉田さんのもう一つの試みが
8×10を凌ぐ、高解像度の世界。
今回は30〜40カット近くをつなぎ合わせ、
超高精細な写真に仕上げられている。 |
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次に土屋さん。
舞台然としたパノラマ絵巻を中心とした3部作である。
築地生まれで在住の土屋さんにとって、
隅田川はふるさとそのものなのだろう。
江戸という昔から栄えている土地柄、
古きよき時代の川の画も、目にする機会が多いのだと思う。
たかだかン十年前の都会では、
劇的な様変わりは少ないのかもしれないが、
明治・江戸、、またその先へと川の記憶の流れを遡った時、
現代の川は、どう映るのだろうか?
古きよき時代の人々が現代を見た時、
彼らはどのように感じるのだろうか?
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土屋さんのパノラマも吉田さんと同様の手法。
パノラマに関しては篠山時代に学んだのだという。
今回の撮影では、
イメージを土屋さん一人、頭の中で持ち、
役者さんへの演技指導に徹するため、
シャッターを待機の役者さんに預けたとのこと。
「なんて大胆な!」と思う人も多いかもしれないが、
夜間撮影でもあり、表情を追うわけでもないので、
シャッターチャンスというものが希薄なのである。
逆に、連帯感が生まれ、
現場の一致団結が感じられたという。 |
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そして岡嶋さん。
パノラマのように配した16点からなる組写真である。
題名は「みちくさ」。
同年代の多くの人には、
何を意味するか判ったのではないだろうか。
福岡に育った岡嶋少年にとって、
みちくさとは自然との挨拶そのもの。
しかし今では、舗装され、
建物が建ち並ぶ景観になってしまったという。
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そんな思い出となってしまったかつての道を、
とある場所で見つけてきた。
実は、その場所も一匹の蝶によって、明らかに
少年の駆け回った道ではないことが語られている。
せめて、まだ自然との共存が残っているところは
そのままであって欲しいとの願いがこもっているのだろうか。
この作品の見所は、両端の2枚、、、ではなく4枚。(笑)
何気なく見ると縦位置の1枚に見えてしまう両端だが、
実はよく見ると、上下2枚から成り立っている。
上と右の写真で見比べてみると判るのではないだろうか。
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次に、小林さん。
普段から都会のネイチャーなどを撮り続け、
自然の大切さを訴えかけている写真家のひとりである。
今回もネイチャーという観点から、
失うと二度と取り戻せない大切さを訴えかけている。
それと同時に、「童心の心」という題名から
昔ながらの遊・民具も絡めて展示、
決して便利とは言えなかったが心豊かな時代を
振り返ってみて欲しいとの願いが込められているようであった。
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今回の写真展では、
写真の題材とそこから連想される遊・民具を組み合わせてある。
展示会場で
「写真から物を想像したのか?それとも物から写真が?」
と疑問の声を聞き、また同様の質問が、
トークショー会場で出たのだが
正解は、被写体からの想像だそうだ。
自然から人が学ぶものは過去にも
そして未来でも多いのではないだろうか?
左の写真はある写真の下にあったもの。
これとペアになる写真は写真展レポートの方で紹介しているが、
両者を見比べて感じてもらえれば幸いである。
あと、今回の作品は和紙へのプリント。
意外とそれぞれに個性の強い作品群なはずなのに、
和というテーマと和紙によって
不思議と落ち着いた空間になっている。
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そして、川合さん。
地球という美しい星に降り注ぐ、神秘的な光のファンタジー。
あまりにもダイナミックなだけにいつまでも
変わらずあり続けるだろうと錯覚してしまいそうになる。
しかし昨今の異常気象などからか、
今回の撮影も2週間のうち3回しか見られなかったという。
しかも大変儚いオーロラだったため、
より一層、大切さを噛みしめたらしい。
オーロラの見える厳寒の地は、
日本人にとって決して身近とはいえない。
しかし、身近でのことが地球規模への
影響になっている事を考えると
見事な画の中にも、ある種の儚さを感じるように思う。
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今回のオーロラは、全て月の出ている時の撮影。
中には月との競演もあり、難しい露出を感じさせず
神秘的な美しい画に仕上がっている。
中でも右の写真はお気に入りだという。
理由は樹氷との競演が撮れたから。
オーロラは雲より高い位置に存在するため
当然ながら晴れていないと見えない。
イエローナイフは晴天率が高いため、
有名なオーロラのビューポイントとして知られているが、
今回は荒天続きの合間での撮影だったため出会えたのだそうだ。
また、オーロラは形は違えど同トーンになりやすいという。
普段はレタッチをしないが、
今回はイメージ先行で作り込んでいるものもあるらしい。
個人的感想を言えば、豊田さんの海の青とまた違った
宙の青(そらのあお)が飽きることなく楽しめると思う。 |
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最後に豊田さん。
モチロン!・・・と言っていいかどうかわからないが(笑)、
海中の風景である。
ただし、ここは多くの工業地域を抱え込む東京湾。
生き物もさぞや住みにくいことだろうと思いきや!
意外にも豊かなポイントもあるのだそうだ。
暖流と寒流の入り交じるこのポイントでは
珊瑚(暖流棲息)と海草(寒流棲息)が群を作り同居する
世界的にもきわめて珍しい風景が存在する。
その2大群は魚たちなどの大きなゆりかごとなる。
地上に生きる私たちには、ここ海中の移ろいは見えにくいが
この豊かな風景を「消し去っても良いのか?」と、
また、魚たちが「オレタチノスミカダ!」と、
訴えかけているようにも感じられた。
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豊田さん曰く、
今回の写真は報道写真を意識したという。
普段の美しく和める写真を見ているだけに、
写真の中のひどく物言いたげな表情が感じ取れた。
特に、代表的と言えるのが下の写真。
メイン被写体は”おもり”。
鉛でできているため、
人はもちろん海中の生き物にも有毒である。
しかし、珊瑚が身を投じて
自分たちの棲む海を守ろうとする姿がそこにある。
豊田さんはおそらく、
静かなる悲鳴にシャッターを切ったのだろう。
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